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人的資本経営でインプロを語るなら、個人の能力開発だけで終わらせない

今日は、人的資本経営を個人の能力開発だけで終わらせず、関係性や場から考える視点について書いていきます。

人が持つ力は、組織の中で受け取られ、他者との関わりにつながってこそ価値になります。個人の成長と組織の動きを結ぶ条件を考えます。

このページの目次

1.人的資本経営は、人の可能性を組織の価値につなげる問いである

以下は、本書で扱った場と関係性の視点を、人的資本経営の文脈へ接続した、私自身の整理です。人的資本経営という言葉が、企業や組織の中で使われるようになっています。人を単なるコストとして見るのではなく、人の学び、成長、経験、関係性、創造性を、組織の価値につながるものとして考える。

その意味で、人的資本経営は、とても大切な視点です。ただ、人的資本経営を「個人の能力開発」だけで捉えてしまうと、少し狭くなってしまう気がしています。もちろん、一人ひとりのスキルや知識を高めることは大切です。でも、人の力は、その人の中だけに閉じているわけではありません。

  • どんな場にいるのか。
  • 誰と関わっているのか。
  • その関わりが受け取られるのか。
  • 挑戦や違和感がどう扱われるのか。

そうした関係性と場の中で、人の力は表れ方を変えていきます。

2.個人の能力だけでは、組織は動かない

組織の中には、優秀な人がいても、なかなか力が発揮されない場があります。

  • 意見を出しても受け取られない。
  • 新しい試みがすぐに否定される。
  • 期待した結果に至らなかった試みや、予定外の出来事が責められる。
  • 違和感を言いにくい。
  • 他部署や他者との関係性の中で、動きが止まってしまう。

こうした場では、個人の能力があっても、組織全体の学びや変化につながりにくくなります。

逆に、一人の小さな関わりが受け取られ、別の人の関わりにつながる場では、組織は少しずつ動き出します。

  • 誰かの発言が、次の問いを生む。
  • 予定外の出来事が、学びの素材になる。
  • 違いやずれが、新しい見方を生む。
  • 一人の挑戦が、チーム全体の動きを変える。

人的資本経営を考えるなら、個人の能力だけでなく、その能力が生きる場も一緒に考える必要があります。

3.インプロは、関係性の中で人の力がどう表れるかを見る

インプロは、「即興で何かをする力」として見られることがあります。その見方も間違いではありません。ただ、インプロの面白さは、個人の即興力だけにあるわけではありません。

  • 誰かが場に出してきたものを受け取る。
  • そこから次の関わりをつくる。
  • 相手や場と関わりながら進む。
  • 予定外をなかったことにせず、次の展開の素材にする。
  • 一人ではつくれない流れを、場全体で生み出していく。

この感性は、人的資本経営の文脈でも重要になると思っています。人の力を、個人の能力としてだけではなく、関係性の中で発揮される力として見る。インプロは、その感覚を体験的に学ぶ入口になります。

4.心理的安全性、非認知能力、共創力をつなげて見る

人的資本経営の文脈では、心理的安全性、非認知能力、エンゲージメント、リーダーシップ、チームワークなど、さまざまな言葉が出てきます。

それぞれ大切なテーマです。でも、それらをばらばらに扱うだけでは、場の実感につながりにくいことがあります。

  • 安心して発言できること。
  • 自分なりの関わりを出せること。
  • 相手が場に出してきたものを受け取れること。
  • 想定外に応答できること。
  • 違いやずれを、共創の素材にできること。

これらは、別々のものではなく、場の中でつながっています。インプロは、このつながりを体験として扱うことができます。

心理的安全性を土台にしながら、非認知能力や共創力が、実際の場の中でどう表れ、どう関係し合うのかを体験的に考える。そのための入口として、インプロには豊かな可能性があります。

5.研修で扱うなら、楽しい体験で終わらせない

人的資本経営の文脈でインプロを研修に取り入れるなら、楽しい体験だけで終わらせないことが大切だと思っています。

もちろん、楽しいことには意味があります。

  • 笑える。
  • 身体が動く。
  • いつもの役割から少し離れられる。
  • 普段とは違う関わり方を試せる。

これは、研修の入口としてとても大事です。でも、そこで終わらせてしまうと、インプロの深い知恵が見えにくくなります。

その場で、誰の関わりが生きたのか。どんな反応が場をひらいたのか。予定外をどう扱ったのか。一人の動きが、チーム全体の流れにどうつながったのか。

そこまで振り返ることで、インプロは人的資本経営につながる実践知になります。

6.この本で扱っていること

『場がひらく、Yes And の先へ』では、インプロを単なるゲームやコミュニケーション術としてではなく、場づくり、関係性、共創、変容の視点から見直しています。

人的資本経営でインプロを語るなら、個人の能力開発だけで終わらせない。

  • 人の力が、どんな場で表れるのか。
  • 一人の関わりが、どう受け取られるのか。
  • 予定外や違いが、どう学びや変化につながるのか。
  • チームや組織が、どう共に動き、共に創り、共に変わっていくのか。

この視点を持つことで、インプロは、人的資本経営、人材育成、組織開発、企業研修をつなぐ実践的な入口になります。人の力を、個人の中だけでなく、場と関係性の中で見直す。そのためのヒントとして、インプロを見直してみませんか。

人的資本を生かすには、個人が力を身につけるだけでなく、その力が関係性の中で受け取られ、組織の価値につながる場が必要です。

あなたの組織では、一人ひとりの力が、他者との協働や新しい動きにどう結びついているでしょうか。

人の可能性を関係性と場から考えたい方は、書籍『場がひらく、Yes And の先へ』もぜひお読みください。

インプロの知恵を、さらに現場へ

書籍『場がひらく、Yes And の先へ』では、この記事で取り上げたテーマを、インプロの視点から、場づくり、関係性、共創、変容の実践と結びつけて探究しています。