一度のワークショップでも、その場にいる人と何かをつくる楽しさを味わうことができます。続けていくと、同じゲームやシーンでも見えるものが変わり、自分が受け取れるものや選べる関わり方が増えていきます。
そこで育った知恵や技芸は、舞台でさらに深めていくこともできますし、日常や人間関係、仕事、チームや組織、教育など、別の場へひらいていくこともできます。
このページでは、インプロの楽しさそのもの、実践から生まれ得る学びや変化、そしてその経験をどのような場へ活かせるのかを紹介します。
仲間とつくる面白さ
インプロの場面や物語は、何人かのやり取りの中から形になっていきます。自分が出したものを誰かが受け取り、そこへ別の人が何かを加える。その人が加えたものによって、自分が最初に出したものの意味まで変わることがあります。
たとえば、自分では何気なく始めた動きを、相手が「店員が閉店準備をしている」と受け取るかもしれません。そこへ別の人が「まだお客さんが来ますよ」と言えば、今度は閉店間際の店という状況が生まれます。最初の人が考えていなかった人物や関係、出来事が、やり取りの中から少しずつ立ち上がっていきます。
相手が何を受け取り、そこから何が返ってくるのかによって、自分の見方や行動まで変わっていきます。誰にも最初には見えていなかったものを仲間と一緒につくっていけることが、インプロの大きな面白さです。
遊びながら、試してみる
インプロには、ゲームや想像の世界があります。普段ならしない動きをしてみたり、知らない人物になってみたり、その場で浮かんだことを実際に試したりできます。
何かをやってみると相手が反応し、その反応によって状況が変わります。そこで起きたことを見ながら、また別の関わり方を試してみる。日本インプロアーツが大切にしている遊び心や冒険も、こうした「やってみたら何が起きるだろう」と仲間と試していく時間の中にあります。
言葉より先に身体が動いたり、相手の表情を見て思わず声が出たりすることもあります。そこに生まれた反応も、その後の遊びや場面をつくる材料になります。
続けると、同じ遊びの見え方が変わってくる
同じインプロゲームでも、参加する人、タイミング、その日に出てくる言葉や動きが変われば、同じルールの中から違う出来事が生まれます。
最初はルールを追いながら遊んでいたゲームでも、繰り返すうちに、相手の小さな変化が見えたり、自分がいつもどんな反応をしているのかに気づいたりすることがあります。前には使えなかったものを使えるようになったり、同じ状況でも別の関わり方を試せるようになったりします。
経験を重ねていくと、相手や場、自分自身を感じ取る細かさが少しずつ変わり、同じ状況でも選べる関わり方が増えていきます。遊びとして始まったものを、何度も戻りながら深く味わっていけることも、インプロを続ける面白さです。
自分から関わることで、何かが動き始める
相手から表現されていることや、その場で起きていることを受け取ることと同じくらい、自分から働きかけることもインプロでは大切です。
たとえば、言葉をかけたり、身体を動かしたり、相手との関係を表したり、何かを選んでみたりすることで、相手が反応できるものが生まれます。その反応によって状況が変わり、そこからまた新しいやり取りが始まります。
自分から働きかけるとき、今見えていることや感じていることから、言葉や動きが自然に生まれることもあります。自分が何かを表すことで、仲間が受け取れるものが増え、場面に新しい可能性が生まれていきます。
受け取ることと働きかけることを行き来しながら、その場を仲間と一緒につくっていく経験を何度も重ねていきます。
予想外の出来事も、その場の材料になる
インプロでは、自分が考えていた通りとは違う反応が返ってきたり、思いがけない言葉や動きが生まれたりします。誰かの言い方、身体の動き、偶然起きた出来事によって、それまでの場面の見え方が変わることもあります。
そうした変化が起きたとき、実際に起きたことを使って続きをつくることができます。相手が違う方向へ動いたなら、その動きによって何が変わったのかを見る。思いがけない言葉が出たなら、その言葉が人物や関係にどんな意味を持つのかを探ってみる。起きたことが、新しい場面の材料になります。
先のことを完全には決められない状況の中で、今起きたことから次をつくっていく感覚も、経験を重ねるほど深くなっていきます。
仲間とつくることが、技芸として深まっていく
インプロを続けると、ゲームのルールを知ることに加えて、相手の言葉や身体の変化をどこまで受け取れるか、自分からどのように関われるか、声や身体、空間をどう使うか、以前に生まれた人物や出来事をどう活かすかといったことも、少しずつ細かく見えるようになります。
同じ技術を知っていても、誰といるか、何が起きているか、何をつくろうとしているかによって、使い方は変わります。
経験を重ねるにつれて、その場にいる相手や今起きていることを見ながら、同じ状況でも選べる関わり方が少しずつ増え、細かくなっていきます。その判断や感覚まで含めて、インプロは少しずつ技芸として深まっていきます。
だからこそ、インプロは一度体験して楽しむこともできますし、何年も続けながら探究していくこともできます。
インプロから生まれる学びは、一つに決まらない
インプロでは、人を見ること、言葉や動きを受け取ること、自分から働きかけること、想像すること、仲間とつくることなど、多くのことを繰り返し経験します。そのため、コミュニケーション、創造性、協働、変化への対応など、さまざまな能力やテーマとの接点を考えることができます。
同じインプロでも、どのゲームや技術を扱うのか、どんな目的で行うのか、どのように進めるのか、どのくらい継続するのかによって、そこで経験することは変わります。
日本インプロアーツでは、実践の中で実際にどんな経験が起きているのか、その経験がどのような能力や概念と重なるのか、さらに実際の育成効果として研究で何が確認されているのかを分けて扱います。
たとえば、あるゲームの中に相手の言葉や動きを丁寧に受け取る経験が含まれていることと、そのゲームによって一般的な「コミュニケーション能力が向上する」と研究上確認されていることは、同じ主張ではありません。
楽しみながら何かを学ぶこともあれば、何かを学ぶためではなく、ただインプロをする時間そのものを楽しむこともあります。その両方を大切にしながら、インプロから生まれる経験や変化を見ていきます。
インプロの経験を、日常へ持ち帰る
インプロで経験した見方や関わり方の一部は、日常の中でも使える選択肢になります。
たとえば人と話しているとき、自分が次に何を言うかだけでなく、相手が今どんな言葉や表情を返しているのかに目を向けてみることができます。
思いがけない出来事が起きたときには、今起きていることの中から使えるものを探してみる。何かを始めたいときには、小さく試してみて、その結果を見ながら次の行動を考える。ワークショップで繰り返してきた経験が、別の場面でふと思い出されることがあります。
日常では、インプロで経験した見方や関わり方を、必要なときに使える選択肢として持っておくことができます。そのくらいの距離感で持ち帰れることも、インプロの魅力だと考えています。
仕事やチーム、組織へひらく
仕事や組織の中にも、あらかじめ答えが決まっていない状況はたくさんあります。相手から情報を受け取って自分から働きかけ、その結果を見ながら判断を変えることもあれば、複数の人がそれぞれ違う視点を持ったまま、一緒に何かをつくることもあります。
状況が変われば、最初の計画を踏まえながら進め方を調整することも必要になります。
こうした場面には、インプロの実践と重なるところがあります。そのため、コミュニケーション、チームづくり、リーダーシップ、ファシリテーション、創造的な協働、変化への対応などを考えるときに、インプロの経験を活かせる可能性があります。
日本インプロアーツでは、その組織が何を必要としているのかを見ながら、インプロのどの実践がどのように役立つのかを考えます。舞台芸術として育ってきたインプロの背景や文脈を大切にしながら、それぞれの目的や状況に合う形でひらいていきます。
教育や学びの場へひらく
インプロには、実際にやってみた経験から学んでいく面もあります。身体を動かし、人と関わり、何かを試してみると、そこから予想していなかったことも含めてさまざまなことが起きます。
その経験を振り返り、もう一度試したり、別の関わり方を選んだりすることで、経験そのものを次の学びへつなげていくことができます。
自分たちで何かをつくり、その過程で起きたことを振り返るという学び方も、インプロの中にはあります。教育や人材育成の場で扱うときには、その活動の中でどんな経験が生まれ、何に気づき、どこへつなげたいのかまで含めて設計することができます。
舞台で、さらに深める
インプロは、即興演劇として舞台の上で発展してきました。人物や関係、出来事をその場でつくり、身体や声、空間を使って表現し、観客と同じ時間を共有します。
舞台で演じ、表現し、観客と出会い、仲間と作品をつくることには、それ自体の価値と面白さがあります。観客と同じ時間を共有しながら、その場にしか存在しないものを立ち上げていくことは、インプロを深めていく大きな道の一つです。
稽古や公演を重ねることで、相手や場から受け取るもの、表現の具体性、人物や関係の深まり、物語や構造との関わりなど、さらに多くのことを探究していくことができます。
楽しみ方も、深め方も、人それぞれ
インプロとの付き合い方は、人によってさまざまです。一度参加して、その日の遊びを存分に楽しむ人もいれば、何度も繰り返しながら技芸として深めていく人もいます。
舞台での表現に惹かれる人もいますし、インプロで経験したことと日常や仕事とのつながりを探していく人もいます。
実際には、こうした方向は互いに行き来したり、重なったりします。舞台を続けながら仕事とのつながりを考えることもできますし、日常への関心からインプロを始めた人が、演じることの面白さに惹かれていくこともあります。
自分が面白いと感じたところから始め、別の方向へ進んだり、以前のテーマへ戻ったりしながら、自分なりのインプロとの付き合い方を育てていくことができます。
日本インプロアーツは、そのためのさまざまな入口と、そこから先へ進める道を少しずつ育てていきます。
ここからできること
インプロを体験する
現在参加できるワークショップを見る。
初めてのインプロ
初参加の前に、どんなことをするのかを具体的に知る。
広大なインプロの世界を深く探究し、編む。
源流、考え方、技術、ゲーム、上演形式など、その先に広がる世界を見る。
法人・組織向け
仕事、チーム、組織でインプロを活かす考え方や展開を見る。