今日は、コーチングにインプロの視点を加えることで見えてくる、言葉になる前の反応について書いていきます。
対話では、整理された言葉だけでなく、呼吸や間、身体の変化にも多くの情報があります。相手の反応を急いで意味づけず、丁寧に受け取る視点を考えます。
このページの目次
1.コーチングは、言葉だけで進むわけではない
コーチングでは、言葉がとても大切です。問いを投げる。相手の言葉を聴く。返ってきた言葉を受け取る。必要に応じて、さらに問いを重ねる。こうしたやりとりの中で、相手の考えや感情や可能性が少しずつ言葉になっていきます。ただ、コーチングは言葉だけで進むわけではありません。相手が言葉を発する前に、すでに何かが起きていることがあります。
- 少し沈黙する。
- 表情が変わる。
- 視線が動く。
- 言いかけて止まる。
- 笑う。
- 息を吸う。
- 身体の向きが変わる。
こうした反応は、まだ言葉になる前の情報です。コーチングにインプロの視点を加えると、この「言葉になる前の反応」が少し見えやすくなります。
2.言葉になる前の反応を、決めつけずに見る
大切なのは、相手の反応を勝手に決めつけないことです。
- 沈黙しているから、困っている。
- 笑ったから、納得している。
- 視線が動いたから、避けている。
そう決めつけてしまうと、相手の内側をこちらの解釈で固定してしまいます。ファシリテーションでもコーチングでも、場に起きた反応を見ることは大切です。でも、その反応をすぐに意味づけしすぎると、かえって相手の可能性を狭めることがあります。
だから、まずは見る。受け取る。少し待つ。必要なら、問いとして場に戻す。
たとえば、「いま少し間がありましたね。何が起きていましたか」「その言葉を言う前に、少し考えているように見えました」
「今の反応の中に、何か大事なものがありそうですか」このように、反応を決めつけるのではなく、次の問いの入口にすることができます。
3.インプロは、相手と場に応答することを体験できる
ここでは、本書で扱った「場に起きていることを受け取る」という視点を、コーチングの場面へ引き寄せて考えます。
インプロでは、相手が何を出してくるかを完全には決められません。
- 相手の言葉。
- 表情。
- 間。
- 身体の動き。
- 予想していなかった反応。
- 場の空気。
それらを受け取りながら、次の関わりを出していきます。これは、コーチングにも通じる感性です。相手の言葉だけを聞くのではなく、相手の反応全体を見る。
場に生まれたものを受け取る。いま何が起きているのかを感じる。そこから次の問いや関わりを選ぶ。インプロは、このような応答の仕方を体験し、振り返る入口になります。
ただし、インプロの視点を入れるとは、場当たり的に振る舞うということではありません。むしろ、相手と場をよく見て、いま必要な関わり方を選ぶということです。
4.沈黙やためらいを、急いで埋めない
コーチングの場では、沈黙やためらいが生まれることがあります。そのとき、つい急いで次の質問をしたくなることがあります。気まずさを埋めたくなることもあります。相手が困っているのではないかと感じて、助け舟を出したくなることもあります。もちろん、必要なサポートは大切です。でも、沈黙やためらいの中に、相手にとって大事なものが含まれていることもあります。
- 言葉を探している時間。
- 自分の中の違和感に触れている時間。
- これまで言葉にしてこなかったことが、少し形になろうとしている時間。
そこを急いで埋めてしまうと、大切なものが出てくる前に流れてしまうことがあります。インプロの視点は、沈黙やためらいも「場に起きていること」として受け取る助けになります。すぐに処理するのではなく、そこに何があるのかを見て、次の関わりを選ぶ。この見方は、コーチングで次の問いや関わりを考える手がかりにもなります。
5.1on1やチームコーチングにもつながる
この視点は、1on1やチームコーチングにもつながります。1on1では、相手の言葉にならない反応が大きな手がかりになることがあります。
何かを言いかけて止まる。ある話題になると、少し声の調子が変わる。問いを投げた後に、沈黙が長くなる。それを決めつけずに、丁寧に扱う。チームコーチングでは、さらに場全体の反応を見る必要があります。
- 誰の発言が受け取られているのか。
- 誰の関わりが流れているのか。
- 沈黙は誰にとっての沈黙なのか。
- ある発言の後に、場全体の空気がどう変わったのか。
こうした反応を見ることは、チームの学びや共創にもつながります。
コーチングにインプロの視点を加えるとは、言葉を超えて、場に生まれているものを見る力を育てることでもあります。
6.この本で扱っていること
『場がひらく、Yes And の先へ』では、インプロを単なるゲームやコミュニケーション術としてではなく、場づくり、関係性、共創の視点から見直しています。
コーチングにインプロの視点を加えると、言葉になる前の反応が見えてくる。相手の言葉だけでなく、沈黙、間、ためらい、表情、場の空気を受け取る。そして、それを決めつけるのではなく、次の問いや関わりにつなげていく。
この感性は、コーチング、1on1、チームコーチング、ファシリテーションにもつながります。インプロは、相手と場に応答する関わり方を、体験的に考える実践でもあります。
コーチングでは、語られた言葉だけでなく、まだ言葉になっていない反応にも、相手にとって大切な何かへつながる手がかりが含まれていることがあります。
あなたは対話の中で、相手の間や呼吸、身体の変化をどのように聴いているでしょうか。
反応を受け取るコーチングの感性を深めたい方は、書籍『場がひらく、Yes And の先へ』も参考にしてみてください。
インプロの知恵を、さらに現場へ
書籍『場がひらく、Yes And の先へ』では、この記事で取り上げたテーマを、インプロの視点から、場づくり、関係性、共創、変容の実践と結びつけて探究しています。