今日は、ファシリテーターが場の反応をどう見て、次の関わりを選ぶのかについて書いていきます。
沈黙や笑い、ためらい、違和感は、進行を乱すものとは限りません。場から返ってくる情報として受け取り、次の一手を考える視点を扱います。
このページの目次
1.ファシリテーターは、進行役であるだけではない
ファシリテーターというと、場を進行する人、話し合いを整理する人、時間を管理する人、というイメージがあるかもしれません。
もちろん、それは大切な役割です。
- 目的を確認する。
- 問いを投げる。
- 発言を拾う。
- 時間配分を見る。
- 話し合いが大きく脱線しないように支える。
こうしたことは、ファシリテーションにとって重要です。でも、ファシリテーターの役割は、それだけではありません。
場に生まれている反応を見る。その反応から、次の関わりを選ぶ。参加者の一言や沈黙を、場全体の流れにつなげる。そこにも、ファシリテーションの大切な働きがあります。
2.場は、いつも何かを返している
場は、いつも何かを返しています。
- 誰かの表情が少し変わる。
- 発言の後に、一瞬の沈黙が生まれる。
- 笑いが起きる。
- 誰かがうなずく。
- 別の誰かが少し身を引く。
- 言葉にならない違和感が漂う。
- 話が急に動き出す。
こうした反応は、すべて場から返ってくる情報です。ファシリテーターが見るべきなのは、発言の内容だけではありません。
その発言によって、場に何が起きたのか。場の温度はどう変わったのか。誰が反応し、誰が黙ったのか。次にどの問いを出すと、場が少しひらくのか。
そうした「場の反応」を見ることが、次の関わりにつながっていきます。
3.沈黙やためらいも、場からの情報である
沈黙は、単なる停滞ではありません。もちろん、場が止まってしまっている場合もあります。でも、沈黙の中には、考えている時間、感じている時間、言葉を探している時間が含まれていることもあります。
ためらいも同じです。
- 誰かが何かを言いかけてやめた。
- ある問いの後に、場の空気が少し変わった。
- 笑いが起きたけれど、その奥に別の感情もありそうだった。
こうした反応は、次の関わりを考えるための大切な手がかりになります。
ファシリテーターは、沈黙をすぐに埋める人ではありません。ためらいをすぐに消す人でもありません。そこに何が起きているのかを見て、必要な関わり方を選ぶ人です。
4.次の関わりは、場の反応から生まれる
ファシリテーションでは、事前設計が大切です。どんな目的で場をつくるのか。どんな問いを用意するのか。どの順番で進めるのか。どこで振り返るのか。
こうした設計があるから、安心して場を進めることができます。でも、実際の場では、設計通りに進めるだけでは足りないことがあります。
- 参加者の反応によって、問いを変えた方がいいことがある。
- 少し待った方がいいことがある。
- 予定していたワークを短くした方がいいことがある。
- 逆に、いま出てきた一言をもう少し掘った方がいいこともある。
次の関わりは、事前に決めた進行表だけから生まれるわけではありません。いまこの場に何が起きているのか。そこから何を受け取るのか。そして、次にどう関わるのか。
その判断の中に、ファシリテーションの深さがあります。
5.インプロは、場の反応に応答することを体験できる
インプロでは、相手から何が返ってくるかを完全には決められません。
- 相手の言葉。
- 動き。
- 表情。
- 間。
- 予想外の展開。
- 場の空気。
それらを受け取りながら、次の関わりを出していきます。これは、ファシリテーションにもとても近い感性です。
場をコントロールしきるのではなく、場から返ってくるものを受け取る。予定外のことを、そこで終わりにせず、次の展開の素材にする。相手や場と関わりながら、一人ではつくれない流れをつくっていく。
インプロは、場の反応を見て、そこからどのように関わるかを、体験し振り返る入口になります。
6.この本で扱っていること
『場がひらく、Yes And の先へ』では、インプロを単なるゲームやコミュニケーション術としてではなく、場づくり、関係性、共創の視点から見直しています。
ファシリテーターが見たいのは、発言の内容だけではありません。
- その発言によって、場に何が生まれたのか。
- その反応を、次の流れにどうつなげられるのか。
- いまこの場が、どこに向かおうとしているのか。
そうした視点を持つことで、ファシリテーションは単なる進行から、場に応答する実践へと深まっていきます。
インプロは、その感性を体験し、振り返るための豊かな入口になります。ファシリテーターが見たい、場の反応と次の関わり。この視点に関心がある方には、ぜひ2冊目も読んでみてほしいです。
ファシリテーターにとって場の反応は、予定から外れたノイズではなく、次の関わりを選ぶための大切な情報です。
あなたが場を進めるとき、沈黙や違和感から何を受け取り、どんな一手を返しているでしょうか。
場の反応を生かすファシリテーションを考えたい方は、書籍『場がひらく、Yes And の先へ』もぜひお読みください。
インプロの知恵を、さらに現場へ
書籍『場がひらく、Yes And の先へ』では、この記事で取り上げたテーマを、インプロの視点から、場づくり、関係性、共創、変容の実践と結びつけて探究しています。