今日は、ファシリテーションでYes Andを「否定しない」だけにとどめないための見方について書いていきます。
相手の意見に賛成することと、場に起きたことを受け取ることは同じではありません。反応や違いを素材にしながら、次の関わりをつくる視点を考えます。
このページの目次
1.Yes And は、わかりやすく便利な入口である
「Yes And」は、インプロを紹介するときによく出てくる言葉です。相手を否定しない。受け入れて、そこに何かを足す。
まずは相手のアイデアに Yes と言い、そのうえで And する。とてもわかりやすく、覚えやすい言葉です。
ファシリテーションやコーチング、チームづくりの場でも、この考え方は、相手や場との関わりを見直す一つの手がかりになります。
人の発言をすぐに否定しない。出てきた意見をいったん受け取る。そのうえで、次の問いや展開につなげる。そういう意味で、Yes And は場づくりにとって大切な入口になります。
2.でも、「否定しない」だけでは場が動かないことがある
ただ、Yes And を「否定しないこと」だけで終わらせてしまうと、少しもったいないと感じています。
なぜなら、実際の場では、否定しないだけでは場が動かないことがあるからです。相手の発言を「いいですね」と受け取る。それは大切です。
でも、そこで終わると、発言がただ並んでいくだけになることがあります。発言を否定しないことと、その発言が場の中で生きることは、同じではありません。ファシリテーションにインプロを活かすなら、この違いを見ておくことが大切です。
3.大事なのは、その発言によって場に何が生まれたのかを見ること
大事なのは、その発言によって場に何が生まれたのかを見ることです。
- その一言で、場の空気はどう変わったのか。
- 他の参加者はどんな反応をしたのか。
- そこに、まだ言葉になっていない違和感や可能性はあるのか。
- その発言を、次の流れにどうつなげられるのか。
Yes And は、単なる「前向きな返事」ではありません。相手の言葉を受け取るだけの態度でもありません。
むしろ、場に生まれたものに関わり、そこから次の関わりを一緒につくっていくための視点として捉え直すことができます。
4.ファシリテーターは、発言をさばくだけの人ではない
ファシリテーターは、発言をさばく人であるだけではありません。
- 場に生まれたものを見る人です。
- 一人の発言を、場全体の流れにつなげる人です。
- 沈黙やためらいも含めて、場から返ってくる情報を受け取る人です。
- 予定通りに進めるだけでなく、いま起きていることに応答する人です。
もちろん、場を放置するということではありません。目的を見失わないこと。安心して関われる枠組みをつくること。参加者にとって安全な条件を整えること。
それは必要です。そのうえで、場から返ってくるものを受け取り、次にどう関わるかを選んでいく。そこに、ファシリテーションの深い実践があります。
5.インプロは、場に応答する感性を育てる
インプロでは、あらかじめ正解が決まっているわけではありません。相手から返ってきたものを受け取り、その場で次をつくっていきます。
もちろん、ただ自由にやればいいということではありません。相手を見て、場を感じて、いま起きていることに関わる。その繰り返しの中で、ファシリテーションにも通じる感性が育っていきます。
Yes And を、ただ「否定しない」として見るのではなく、場に生まれたものを受け取り、次の流れを共につくる感性として見直してみる。そうすると、インプロとファシリテーションの接点が、少し違って見えてきます。
6.この本で扱っていること
『場がひらく、Yes And の先へ』では、Yes And を「否定しない」だけで終わらせず、その水面下にある場づくり、関係性、共創の視点から見直しています。
- ファシリテーションをしている人。
- ワークショップをつくっている人。
- 対話の場に関わっている人。
- チームや組織の学びに関心がある人。
そういう人にとって、Yes And は、もう一度見直す価値のある言葉だと思います。Yes And は、相手を否定しないためだけの言葉ではありません。場に生まれたものを受け取り、次の流れを共につくるための入口でもあります。
ファシリテーションにインプロを活かすなら、Yes And を“否定しない”だけで終わらせない。その先に、場がひらくための大切な感性があるはずです。
Yes Andは、意見を無条件に肯定する技法ではなく、場に現れたものを受け取り、関係の中で次をつくるための態度です。
あなたが進行する対話では、違いやためらいを、次の関わりへどのようにつないでいるでしょうか。
Yes Andをファシリテーションの実践として深めたい方は、書籍『場がひらく、Yes And の先へ』もあわせてご覧ください。
インプロの知恵を、さらに現場へ
書籍『場がひらく、Yes And の先へ』では、この記事で取り上げたテーマを、インプロの視点から、場づくり、関係性、共創、変容の実践と結びつけて探究しています。