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起きたことを、すぐに評価しない――インプロで予定外を扱うということ

今日は、予定外のことが起きたとき、すぐに評価せずに扱うインプロの視点について書いていきます。

思い通りにならなかったことにも、次の展開につながる素材が含まれていることがあります。評価を保留することで見えてくる可能性を考えます。

このページの目次

1.起きたことを、すぐに評価しない

予定していた通りに進まなかったとき、私たちは、起きたことにすぐ評価を与えたくなります。

  • うまくいった。
  • うまくいかなかった。
  • 正しかった。
  • 間違っていた。

評価すること自体が、悪いわけではありません。振り返りや改善のためには、評価が必要な場面もあります。

ただ、何かが起きた直後に評価を確定してしまうと、その出来事に含まれていた情報や可能性が見えにくくなることがあります。

言葉を言い間違えた。相手と動きがずれた。沈黙が生まれた。予想していなかった反応が返ってきた。場の動きが少し止まった。

それをすぐに良し悪しで判断する前に、まず何が起きたのかを見る。その出来事によって、相手はどう反応したのか。場にはどのような変化が生まれたのか。そこから、どのような関わりが可能なのか。

インプロでは、起きたことへの評価をいったん保留し、そこに現れているものへ関わることが大切になります。

2.ラベルを貼ると、見えなくなるものがある

何かが予定通りに進まなかったとき、人はその出来事を早く処理したくなることがあります。

  • 謝って終わらせる。
  • 元の進行に戻す。
  • なかったことにする。
  • 笑って流す。
  • 誰かの問題として片づける。

たとえば、起きたことに「失敗」というラベルを貼った瞬間、それは早く処理し、忘れ、修正すべきものとして扱われやすくなります。

もちろん、すべての出来事を無理に活かす必要はありません。何にでも意味をつければよいわけでもありません。ただ、すぐに処理してしまう前に、その出来事によって場に何が起きたのかを見ることはできます。

その沈黙によって、関係性の変化が見えたかもしれない。そのずれによって、互いの前提の違いが見えたかもしれない。その言い間違いから、予想していなかった意味が生まれるかもしれない。

起きたことをすぐに評価して閉じず、そこに含まれている情報を見る。それが、予定外を扱うための一つの入口です。

3.起きたことに含まれている情報を見る

インプロでは、起きたことを完全になかったことにはできません。

  • 誰かが言ったこと。
  • 身体が動いたこと。
  • 相手が返した反応。
  • 場に生まれた沈黙や笑い。

それらは、すでに場の一部になっています。

そこで問われるのは、何が起きたのかということです。それによって、相手や場に何が生まれたのか。その出来事は、これまで見えていなかった何を示しているのか。いま、どのような関わりが可能なのか。

言い間違いが、人物の特徴として受け取られることがある。沈黙が、関係性の変化を示すことがある。ずれが、場を詳しくする情報になることがある。予定外の反応が、新しい見方の入口になることがある。

大切なのは、思い通りにならなかった出来事に、無理に前向きな意味をつけることではありません。起きたことをよく見て、そこに関わることです。

4.扱いにくいものから、すぐに離れない

場には、ときどき扱いにくいものが現れます。

  • 気まずい沈黙。
  • 噛み合わないやり取り。
  • 意図していなかった反応。
  • どう扱えばよいか、すぐには分からない一言。

そのとき、別の話題や新しい情報を重ねて、早く離れたくなることがあります。

けれど、扱いにくいものからすぐに離れず、少し関わり続けることで見えてくるものがあります。

これは、気まずさを長引かせることではありません。無理やり意味をつくることでもありません。いま起きていることを見失わず、必要な時間だけ関わり続けることです。

インプロには、Yes Andを「受け入れて何かを足す」というだけでは捉えきれない、こうした細かな関わりの実践があります。

5.組織や学びの場でも、予定外は起きる

会議や研修、チームの活動でも、予定外のことは起きます。

  • 意見が噛み合わない。
  • 思ったような反応が返ってこない。
  • 誰かの一言で場が止まる。
  • 新しい試みが計画通りに進まない。
  • これまで見えていなかった違和感が現れる。

そのとき、起きたことをすぐに問題として閉じるのか。それとも、そこに含まれている情報を受け取り、次の対話や判断に活かすのか。この違いは、場への関わり方を考えるうえで重要です。

インプロで予定外を扱う経験は、組織開発、人材育成、ファシリテーション、チームづくりを考えるための一つの手がかりになります。

6.この本で扱っていること

Yes Andは、「相手を受け入れて、そこに何かを足すこと」と説明されることがあります。それは分かりやすく、大切な入口です。ただ、インプロの実践には、その説明だけでは見えにくい、より細かな関わり方があります。

  • 場に生まれたものを、どのように受け取るのか。
  • 言葉だけでなく、沈黙や身体や関係性の変化に、どう気づくのか。
  • 扱いにくいものが現れたとき、すぐに手放さず、どう関わるのか。
  • 予定外を、どのように次の関わりへ活かすのか。

『場がひらく、Yes And の先へ』では、Yes Andの水面下にあるこうした考え方や実践を、場づくり、コーチング、ファシリテーション、組織開発などの文脈とつなぎながら掘り下げています。起きたことを、すぐに評価して閉じるのではなく、そこに現れているものを見て、関わり続ける。

そのようなインプロの見方を、本書でたどってみてほしいと思っています。

予定外の出来事をすぐに良し悪しで片づけず、まず起きたこととして受け取ると、そこから次に使える情報や可能性が見えてきます。

あなたの日常や現場では、思い通りにならなかった出来事を、どの時点で評価しているでしょうか。

予定外の出来事との関わり方をさらに考えたい方は、書籍『場がひらく、Yes And の先へ』もぜひお読みください。

インプロの知恵を、さらに現場へ

書籍『場がひらく、Yes And の先へ』では、この記事で取り上げたテーマを、インプロの視点から、場づくり、関係性、共創、変容の実践と結びつけて探究しています。