前回の記事では、Yes, And を、もっとプレイフルに、もっと共創的に捉え直すことについて紹介しました。
相手から出てきた表現を受け取り、自分もそこに関わりながら、次の流れを共につくっていく。
そのようなインプロの体験の中では、自分の中にも変化が起きていきます。
ここで大切になるのが、「ありのまま」と「変わっていく」は矛盾しない、という見方です。
このページの目次
🌱 「ありのまま」は、変わらないことではない
「ありのまま」と聞くと、「今の自分のままでいい」「無理に変わらなくていい」という言葉を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、今の自分を否定しすぎないことは大切です。
けれど、インプロでいう「ありのまま」は、今の自分を固定して、そのまま守り続けることではありません。
いま自分の中にある感覚、反応、ためらい、興味、思わず出そうになる一言。
そうしたものを、なかったことにせず、まず受け取ることです。
うまく見せようとしすぎたり、正しい反応を探しすぎたりすると、自分の中で実際に起きていることが見えにくくなります。
インプロでは、まず今の自分の反応に気づくことから始まります。
それが、「ありのまま」から始めるということです。
🎭 関わるから、変わっていく
ただし、そこから何も変わらないわけではありません。
インプロでは、相手から思いがけない表現が出てきます。自分の予想とは違う反応が返ってくることもあります。
そのとき、自分の中に新しい反応が生まれることがあります。
いつもなら黙っているところで、言葉が出てくることがあります。いつもなら急いで答えようとするところで、少し待ってみることがあります。自分では選ばないと思っていた関わり方を、相手の反応に触れて試してみることもあります。
そうしたやり取りの中で、自分の見え方が少し変わっていきます。
「自分はこういう人だ」と思っていたものが、実際の関わりの中で、少しほどけることがあります。
🤲 否定して変えるのではなく、関わりの中で動いていく
ここで起きている変化は、「今の自分ではだめだから変わらなければならない」というものではありません。
今の自分を否定して、別の誰かになろうとすることでもありません。
むしろ、いま自分の中にある反応を受け取りながら、相手や状況と関わっていく中で、自然に次の反応が生まれていく。
その動きの中で、自分の一面が変わって見えたり、これまで出しにくかったものが表に出てきたりします。
インプロでは、「ありのまま」は出発点です。
そして、「変わっていく」は、その出発点から人と関わっていく中で起きることです。
だから、この二つは対立しません。
ありのままの現在地から始めるからこそ、そこから変わっていくことができるのです。
この本で紹介していること
『非認知能力を育む「即興(インプロ)の知恵」』では、Good Nature やオーセンティック・インプロ™の考え方を通して、その人らしさや本来性について紹介しています。
ただし、それは固定された「本当の自分」を探し当てるという話ではありません。
いまの自分の感覚や反応を大切にしながら、人との関わりや実際の体験の中で、自分の見え方や関わり方が変わっていく。
そのプロセスに、インプロの大切な意味があります。
インプロは、今の自分を否定せずに始められる体験です。
同時に、人と関わる中で、これまで見えていなかった反応や一面が現れてくる体験でもあります。
「ありのまま」と「変わっていく」。
この二つが同時に起きるところに、インプロの豊かさがあります。
次の記事では、星を見るインプロと、可能性を見るまなざしについて見ていきます。
インプロの知恵を、さらに楽しむ
書籍『非認知能力を育む「即興(インプロ)の知恵」』では、この記事で紹介したテーマを、さまざまな考え方や実践とのつながりの中でさらに深く探究しています。