インプロでは、あらかじめすべてが決まっているわけではありません。
台本がなく、正解も一つに決められていないからこそ、相手から出てきた表現を受け取り、その都度、関わり方を選びながら、次の流れを共につくっていきます。
ただし、それは「何をしてもいい」という意味ではありません。
ただ思いついたことを出すだけでも、相手に合わせるだけでも、インプロの豊かさは十分には生まれません。
『非認知能力を育む「即興(インプロ)の知恵」』では、インプロを支える大切な価値観として、Playfulness(プレイフルネス:遊び心)/Respect(リスペクト:尊重)/Co-create(コクリエイト:協創・共創)を紹介しています。
この記事では、読みやすさを優先して、主に「遊び心・尊重・共創」という言葉で見ていきます。
このページの目次
🎈 Playfulness(プレイフルネス:遊び心)――起きていることに関わってみる
遊び心とは、ただふざけることではありません。
もちろん、インプロには笑いや軽やかさもあります。
でも、本書で扱う Playfulness は、それだけではありません。
目の前で起きていることに対して、「これは何だろう」「ここから何が生まれるだろう」と関わってみる姿勢です。
予定外のことが起きたとき、そこにあるものを受け取ってみる。
相手から出てきた表現に対して、すぐに正解・不正解をつけるのではなく、そこから何かを始めてみる。
自分の中に浮かんだ反応を、次の一歩として差し出してみる。
遊び心があることで、インプロのやり取りには動きが生まれます。
🤲 Respect(リスペクト:尊重)――出てきたものを雑に扱わない
一方で、遊び心だけでは、インプロはただ軽く流れてしまうことがあります。
そこで大切になるのが、Respect、つまり尊重です。
尊重とは、相手を否定しないことだけではありません。
相手から出てきた言葉や動き、表情、沈黙を雑に扱わないこと。
その時間に生まれた流れやプロセスを大切にすること。
自分自身の感情や反応、表現にも丁寧に気づくこと。
Respect は、相手だけに向けられるものではありません。
他者へ向かう尊重であり、そこに生まれるものへの尊重であり、自分自身への尊重でもあります。
尊重があるから、出てきた表現はすぐに評価で切り捨てられるのではなく、次の関わりのきっかけとして受け取られていきます。
🌱 Co-create(コクリエイト:共創)――一人では生まれないものが立ち上がる
インプロで起きる創造は、一人だけで完結するものではありません。
誰かが表現を差し出す。
それを誰かが受け取る。
そこに別の反応が重なる。
その積み重ねの中で、一人では思いつかなかった流れが生まれていきます。
これが、Co-create、つまり共創です。
共創とは、ただ一緒に作業することではありません。
人と人が関わる中で、それぞれの発想、反応、感覚、選択肢が影響し合い、一人では生まれなかったものが立ち上がってくることです。
インプロでは、誰か一人がすべてを決めるのではありません。
自分が出したものが、相手によって変化する。
相手が出したものによって、自分の次の一歩も変わる。
その相互作用の中で、思いがけない表現や流れが生まれていきます。
🧭 三つは、別々ではなく支え合っている
遊び心は、やり取りに動きを生みます。
尊重は、出てきたものを丁寧に扱う姿勢を支えます。
そして、その二つがあることで、共創が生まれやすくなります。
遊び心だけだと、軽く流れてしまうことがあります。
尊重だけだと、慎重になりすぎて動きが出にくくなることがあります。
遊び心があるから、試してみることができる。
尊重があるから、出てきたものを大切に扱うことができる。
その両方があるから、人は自分だけで完結せず、他者と一緒に何かを生み出していくことができます。
本書で大切にしているインプロの知恵は、このバランスの中にあります。
この本で紹介していること
『非認知能力を育む「即興(インプロ)の知恵」』では、インプロを、ただ舞台上の技法としてだけではなく、人と人が関わり、仲間と共に未来を創っていくための知恵として紹介しています。
その中核にあるのが、Playfulness(遊び心)、Respect(尊重)、Co-create(共創)です。
遊び心を持って関わること。
相手や自分自身、そこに生まれる表現やプロセスを尊重すること。
一人で完結させず、他者と共に新しい流れをつくっていくこと。
インプロの面白さは、ただ何でもありというところにはありません。
遊び心と尊重に支えられたやり取りの中で、相手から出てきたものを受け取り合いながら、次の流れを共につくっていけるところにあります。
そこに、共創としてのインプロの大切な魅力があります。
インプロの知恵を、さらに楽しむ
遊び心、尊重、共創は、それぞれ別々に働くものではなく、実際のやり取りの中で互いを支え合う価値観です。
書籍『非認知能力を育む「即興(インプロ)の知恵」』では、こうした価値観を、インプロの思想や実践と結びつけながらさらに深く探究しています。